花粉症なんかに負けてられないから

彼が花粉症だと知ったのは、ついさっきの会議でのことだった。

会議がはじまって10分もせずにくしゃみを連発、鼻をすすってかんでは「すみません」と両隣の同僚に謝っていた。

上司が「花粉症大変だなあ」とそんな彼をみながらぼやいていたことから、発覚したのだ。

私はこの事実に少し、ちょっと、いやかなりがっかりした。

別に花粉症であるから不愉快に思ったわけではない。私も花粉症だから対してそこに嫌悪感はない。

花粉症ということは鼻が利きにくくなる、ということに対してがっかりしたのだ。

半年ほど前から彼のことが気になって、好きなのかも知れないと思いアプローチしてきた。

ちょくちょく食事はしたし、彼と仲の良い同僚からの情報収集もした。

先日のバレンタインには本命チョコと一緒に告白した。

困ったようにくしゃっと笑って彼は「こちらこそよろしくお願いします」と言ってくれて抱きしめてくれた。

これから彼氏彼女だ、と浮かれたものの、彼のことをまだよく知らないから情報収集はまだ続けようと思った。

直接聞けばいいかもしれないけど、まだ勇気が必要だった。

その中で先日、彼好みの香りの話を聞いたばかりだった。

普段、香りのあるヘアオイルや香水を一切つけない私にとっては、彼の好みの香りを纏うなんて挑戦的な出来事だった。

好みを聞いてから、香水を取り扱うお店に初めて足を踏み入れいて、一生懸命店員さんと相談して

いま人気があるリビドーロゼhttp://www.brittandhive.com/というものを買った。

宙に吹きかけて、その下を潜るようにつけると柔らかく香りますよ、という店員さんのアドバイスに従って付けてきたのに。

慌ただしい朝の支度の中、思い切ってつけてきたのに。

鼻が利きにくい花粉症持ち相手ではその効果なんてまったくないのではないだろうか、とがっかりした。

花粉症だって前もって彼から聞いておけばよかった。

もう今日は帰りたいな、なんてげんなりしつつ、会議後に彼に話しかけた。

「花粉症なの?大丈夫?」

「そうなんだよ、今の時期は辛いんだよな」

「そっか、お大事にね」

「ああ、ありがとう。・・・あれ、なんか良い匂いする」

「え」

「気のせい?なんか付けてる?すごい良い匂い」

困ったようにくしゃっと笑う彼。

気がついてくれた、ああやっぱり好き。花粉症になんて負けてられない、明日もつけよう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です